遺言書は、死後に自分の財産を誰にどうやって分配するかなどを書き記すものです。生涯をかけて築いてきた財産を、残された家族や知人にトラブルなく有意義に活用してもらうために、遺言を遺しておくことは非常に有用です。遺言書は一見誰でも簡単に書けるように見受けられますが、実際には民法によっていろいろな決まりごとがあり、法律の定める形式に従って正しく作成しなければ、無効になってしまうことがあります。ここでは、遺言書作成にあたっての重要なポイントを説明します。
遺言書には遺言者ご自身の意思を自由に記載することができますが、書いたことがすべて法律上の効力を持つわけではありません。法的な拘束力を持つ遺言の内容は決められており、これを法定遺言事項といいます。法定遺言事項には、以下のようなものがあります。
また、法定遺言事項以外のことも「付言事項」として記載することができます。例えば遺言書作成の経緯や家族への感謝の気持ち、「自分亡き後は争わずに家族仲良く暮らしてほしい」、「このように埋葬・供養してほしい」といったものがこれにあたります。付言事項にはもちろん法的な拘束力はありませんが、自分の意思がより尊重されやすくなったり、ご遺族間のトラブルを防いだりすることができるという点で、記載しておく意味はあるといえるでしょう。
せっかく書いた遺言書に不備があり無効になってしまい、遺言の内容が実現できなければ意味がありません。ここでは、多くの方が選択する「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の二つの方式についてご説明します。
自筆証書遺言は費用をかけず、誰にも知られることなく証人なしで手軽に作成できるのが特徴です。遺言の内容については、遺言者が全文を自筆で書くことが条件のため、代筆、パソコンなどにより作成されたものは無効です。
ただし、遺言書に添付する相続財産の目録については、パソコンで作成したリストや他人による代筆、通帳のコピーなど、自書によらない書面の添付が認められるようになりました(相続法の改正を受け、平成31年1月13日以降に作成されたものが対象です)。
公正証書遺言とは、公証人が作成し公証役場で保管される形式の遺言書です。
遺言書の作成にあたり、記載したい事柄を公証人に伝え、それをもとに公証人が作成します。
そのため、自筆の必要がありません。
自筆証書遺言のデメリットとして、紛失のおそれや、遺言書を発見した方に破棄されることが考えられます。その場合、せっかく悩みに悩んで作成した遺言書が生かされないことになってしまいます。他方、公正証書遺言は公証役場に保管されますので、変造や紛失などの危険はありません。
公正証書遺言作成のためには、様々な書類を準備する必要があるほか、公証役場に支払う手数料が発生します。
弁護士に遺言書の作成を依頼する大きなメリットは、将来、遺言書の記載内容について相続人の間でトラブルが発生しないよう、事前に対策をとることができる点です。弁護士は法律の専門家ですので、法律やこれまでの経験に基づき、遺言書にどのような内容を盛り込めばよいか、どのように記載すればトラブルに発展しないかなど、事前に対策をとることができます。万一トラブルに発展した場合には、司法書士や行政書士と異なり、訴訟や調停手続などに制限なく対応することができます。