終活や相続においては、法的な検討の過程で、医師との連携が必要な場面があります。
例えば、遺言書の作成や任意後見契約の締結では、判断能力の有無が争点となる場合があります。
遺言書では、作成時の判断能力が低下していたことを理由に無効とされ、せっかく決めておいた内容とは全く異なる遺産分割がなされてしまうケースがあります。
また、認知症などによって判断能力が低下した場合に備えて、将来の財産管理や介護についてあらかじめ任意後見契約を締結しておくことができますが、こちらも同様に、締結時に判断能力が低下していたことを理由に、任意後見契約の効力が無効とされてしまうこともあります。
このような事態を防ぐためには、遺言書や任意後見契約書を作成する前に、あらかじめ精神科医・心療内科医による診断を受けておくことがおすすめです。判断能力を有しているという証拠を残しておくことが、有効となる場合があります。
終活として成年後見制度の利用を検討されている方にとっても医師との連携は重要です。成年後見制度には、判断能力の程度に応じて複数の類型があるため、医師の診察を受けていただいた上で、どの類型を利用するのが良いのかを検討する必要があります。
終活や相続の意思決定は、一般に、個々の価値観や家族背景を熟慮して最終的に決定しなければならず、その過程で、多くの方が葛藤や不安、悩みや迷い、時には罪悪感を抱えます。
そのため、心から納得ができる意思決定をすることは、精神的にも大変な負担を伴うものです。
また、納得した上で意思決定をしたつもりでも、後に後悔が生じたり、家族・親族からの反対を受け、意思決定の撤回や留保をせざるを得なくなったりするケースも多く見受けられます。このように、終活や相続に関する葛藤や不安の中で、独力で終局的な意思決定をすることは、想像以上に難しいことなのです。
さらに、終活や相続をご自身の価値観に合致した意義深いものにするには、人生の系統的な振り返りと現在の生活状況に関する客観的な分析も不可欠です。人生の振り返りにおいては、誰もが家族や友人に打ち明けることができない秘密や、人に話すことがはばかられるような将来への希望や不安もあることでしょう。
しかし、信頼する家族や友人にそのような相談をした場合、その内容が現在の生活や人間関係に何らかの悪影響を及ぼす可能性があることも想定する必要があります。
よって、完全に秘密が守られる中立的な相談相手を確保することが何より重要なのです。
なお、医師との相談結果は、診療録(カルテ)に記録されます(医師の診察やカルテの保存は、当相談所が提携しているクリニックに委託して行います)
ご自身の葛藤のプロセスや意思決定までの変遷がカルテに残され、それが大切に保管されることは、この世のどこかにご自身の人生の足跡を密かに残すことと同じ意味があるとも言えます。
もちろん、カウンセリングや各種相談に関して記録を残して欲しくない方は率直にお申し出ください。クリニックとしてではなく、ストレスラボ(カウンセリング施設)で受託することも可能です。あらゆるご要望を尊重したサポートを行います。